2014年3月 有頂天家族を巡る京都旅行聖地巡礼記

森美登美彦氏に出会ったのは2010年にノイタミナ枠で放映された「四畳半神話体系」のアニメでした。
古めかしい語り口調でつらつらと”私”の物語が進んでいくその文学的なアニメ手法に魅入られ、思えばそこから彼のファンになっていたのでしょう…
小難しく古風な単語を使うと思えば萌えとかわいらしさを含む的確な擬音語を織り交ぜた森美氏の文体は非常に自分の好みにドンピシャでした。その森美氏が”たぬき”をモデルに小説を書いているという。そしてそれがアニメになったという。
一ファンとして「見る」以外の選択肢はありませんでした。

それに何より、舞台になった場面が”京都”です。
私は京都に居を構えていませんが、京都へはバスで数時間のところに住んでいます。
これは行かねばならぬだろうと、同じ森美作品に魅了された友人と共に人生初の聖地巡礼へと旅立ったのです。
今回の計画は2泊3日の旅。

kyoto

少し別の作品も入っているが、そこはアニメファンとしての性ですね。
せっかく京都へ行くのだからと、京都を舞台にしているものも盛り込んでみました。

そして今回の宿泊先は「懐古庵」という町屋さん。
この町屋、雰囲気がものすごく素晴らしい。

宿泊先と事務所は別の場所にあり、いきなりどでかい狸がお出迎え。
狸を巡る旅のために用意されたといっても過言ではないこの様子。
わくわくしか出てこない。

事務所でお金を払い、係の人に案内されて部屋にやってきました。


部屋の入り口は非常に小さく、昔の建付けそのままを残している造りはまるで忍者屋敷のようで、
忍者の卵たちを敬愛し、忍者に憧れている私の妹のはしゃぎっぷりといったらなかった。
いや、でもほんと忍者っぽい人っていうか今にも着流しを着た人がひょっこり出てきてもおかしくない玄関先です。
お風呂にも狸。狸。狸。
そしてこのお風呂、真っ黒な鉄の窯でこれもまた雰囲気抜群!最高。
ただ、この聖地巡礼をした季節が春先で、雪もちらつくほどの寒気のせいで大層な冷え込みであったので、このような野点の雰囲気を感じるよりも寒さに震える羽目にもなってしまいました……

でも雰囲気は最高ですから!

部屋にはファンヒーターが置かれ、2階の押し入れから布団を引っ張り出し、敷き詰めたら非常に快適な空間を作り出すことに成功しました。
隠れ家のようでそれはそれで気に入り、ひとしきり部屋の内部や外の景色をシャッターにおさめ、きゃっきゃとはしゃぎ、夜はふけていきました……

1日目:静寂な高台寺へ

ひとしきりはしゃいだら気を取り直して観光です!
実はこの時、同行していた友人が体調を崩し、急遽妹と二人旅となりました。
ぽっかり時間ができたので、せっかくなので遠出することに。
宿舎の近くにレンタカーがあったのでレンタカーを借りて高山寺に向かいます。

高山寺は紅葉が有名なお寺で、秋になると臨時のバスが出ます。
かの有名な「鳥獣戯画」が展示されており、鳥獣戯画といえば「京騒戯画」ですね!(私アニオタですから!)
そして京騒戯画にも出ている明恵上人が開いたとされるお寺。

秋になると人の出入りも多くなり、活気に満ちているようだが、春先の雪のちらく今の季節に訪れる人は珍しいらしい。
到着したら山から湧き出る清水が流れる音と小鳥の鳴き声だけが聞こえる山の中です。

人が居ない。

人っ子一人いない。

人の居ないだだっ広いお寺というものはそれだけで素晴らしい。
山の中のお寺の、身に染みる寒さ、雪が解けて湿った地面、その湿気を吸った森たち。
建物も木々も草花もひっそりと声を殺してそこに”居る”雰囲気。
境内の中を歩きながら、「絶対にどこかに忍者が隠れているはず」と妹と語り合い、
そのなんともいえない雰囲気を満喫したのでした。

明恵上人を弔っているというお堂も拝見し、もちろん、
鳥獣戯画の原本も拝み、大満足のまま岐路に着きました。
機会があったらまた来たいところです。

そして帰路についたら待ちに待った夕食です!
本日のメニューはゴージャスに三嶋亭本店にお邪魔しちゃいます!
寺町三条にある明治6年創業の老舗すき焼き店。
「有頂天家族」では金曜クラブの会合で使われているお店ですね。

店の構えから老舗の香りがプンプンである。
お店の方も京都弁でお出迎え。
若い小娘が入っちゃっていいのか一瞬迷うほどの店構え。

通されたお部屋に入って「おお!この六角朱色テーブル!!まさに作中で淀川教授と矢三郎がお肉を取り合ってたすき焼き屋だ!」


出てきたお料理見てくれたまえ。
この霜降り!
友人の調子がすぐれなかったので今回はすき焼きではなく水炊きにしたのだが、
「お肉って…こんなに美味しいものなんやな…」ってしみじみ思っちゃうほどの美味しさ。

上品なお味でもう大満足。

そして何気に、最後に出てきたフルーツがめっちゃ美味しかった。
めっちゃ美味しかった。

もう大満足。
おなかを満たし、狸よろしく腹堤を鳴らしながらお宿に帰宅。

 

2日目:矢次郎が居る井戸

カエルの矢次郎が居る井戸は、「六道さん」の通称で知られる六堂珍皇寺の中にあります。

六道とは、仏教の教義でいう地獄道(じごく)・餓鬼道(がき)・畜生道(ちくしょう)・修羅(阿修羅)道(しゅら)・人道(人間)・天道の六種の冥界をいい、人はこの六道の分岐点であの世とこの世を行き来するのだと言われている。
京都には、いわゆる冥界への入口とされる場所が南北東西に配置されており、この六堂珍皇寺はその真ん中に位置するのモノなんですね。

六道珍皇寺の公式HPには

このような伝説が生じたのは、当寺が平安京の東の墓所であった鳥辺野に至る道筋にあたり、この地で「野辺の送り(のべのおくり)」をされたことより、ここがいわば「人の世の無常とはかなさを感じる場所」であったことと、小野篁が夜毎(よごと)冥府通いのため、当寺の本堂裏庭にある井戸をその入口に使っていたことによるものであろう。この「六道の辻」の名称は、古くは「古事談」にもみえることよりこの地が中世以来より「冥土への通路」として世に知られていたことがうかがえる。

とあり、この場所には幽霊にまつわる昔話が語り継がれてるのです。
その一つが子育て飴。
昔、亡くなった母の魂が、死んだ後も子供に飴を与え続け育てたという逸話の残る飴まで売っています。

そんな雰囲気抜群の坂を登っていくこと数分。
六道珍皇寺の門構えが見えてきました。

境内の中に入ると、「あ!有頂天家族のポスターが張ってる!」

矢次郎がいた井戸というものは、かつて小野篁(平安時代の歌人)が冥界への入り口にしたという井戸です。
実はこの井戸、普段は原則非公開。
お寺の中からのぞき窓から見るだけだと思ったのだが、なんと幸運なことに、昨日から一般公開を開始したという。
これも日頃の行いかな??(違う)

ちなみにここに行く前に、住職さんがお寺に奉納されているいろんな地獄絵図がを見せてくれます。
その中に、「鬼灯の冷徹」のオープニングに使用されている地獄絵図まんまが見れるのですよ!
しかも、絶賛アニメ放映中にいったためか、なんと閻魔様のお姿(アニメバージョン)まで展示されていました。
すげぇ!!!
思わず鬼灯様に出会えてそれもまた楽しかった。

そして矢次郎の井戸をのぞき込むとなるほど。
これが冥府へとつながっている井戸。
ここに向かって悩み事を呟けば途端に吸い込まれていってしまいそうな……
泥と草まみれの井戸でありました。

隣にの水が溜まっている水がめでは「水恋みくじ」が100円でできるのでこちらもおすすめです。

矢次郎に別れを告げた後は、六角堂のへそ石様を見に行きました。

へそ石様~
ここで煙をいぶしたらしっぽぐらいは出してくれるだろうか。

そしてこの六角堂のすぐ近くに母上と兄弟たちがあっていた「青い屋根の喫茶店」があることが発覚。
それは是非行かねば、と足を伸ばす。

店内はなんともノスタルジックな雰囲気で。
運よく、狸一家が座った位置に座れ、珈琲とケーキを頼み舌鼓を打つ。
うーーん、なんと至福なことか。

珈琲を腹に溜め、二条陣屋を巡り、
昼からは工作の時間です。

4000円ほどで和紙照明作りを体験できる体験場所があり、
我々はそこで一心不乱に指を動かし、照明作りに興じた。
そして我が妹殿が作成した照明は「よろしい、良い値で買おう」という代物で、我が妹とはいえ、あっぱれな作品でした。
私の作品を掲載していないのはそれだけで察していただきたい。

かわいい。
かわいかった。

ここで私の持病の片頭痛が出、私は宿舎へ戻り、
残った友人と妹は「朱硝子」のモデルとなったバーノスタルジアへ出向いて行きました。

私の方はというと、薬が効いたせいもあり、数時間で元気を取り戻したが、
帰ってきた彼女らの「すんばらしかった」と目をキラキラさせながら語る姿に口惜しい感情を抱きながら、
カップラーメンをすするはめに…

これもまた日頃の行いのせいか。(そうかも…)

三日目:狸の寝床

狸を巡る旅も大詰め。
最後は彼らの寝床。
下鴨神社 糺の森。

有頂天家族公式読本を読むと、本当にこの森には狸が住み着いているらしい。

矢一郎兄さんが瞑想に耽っていたシーンの背景。

発売されている「有頂天家族」のブルーレイディスクのパッケージの裏には公式ビジュアルイラストが描かれており、
そのイラスト目当てに購入すべきか本気で検討するレベルの出来なのだが、
その第6巻の構図がこれである。

父上があの世へさよならした夜、一家が父上の帰りを心配しながら待っているシーンで
使われたのはここでしょうね。
そして赤玉先生がぽてぽてと素知らぬ顔して歩いてきたシーンも等を再現しつつ、「有頂天家族」ごっこに興じました。楽しかった。
他人から見れば阿呆である。

だがしかし!
これもまた阿呆の血がしからしむるところである。

そしてそのまま糺の森を徘徊し、矢次郎兄さんが脱力し、寝っ転がっていた橋はどれだ、と探し回った。
結局、それらしいところに目星をつけたが、ここがそうと確かには言えない。

そして良い感じに小腹も空いてきたので「司津屋」へ向かいます。
矢三郎が銀閣・金閣に捕らえられたお店です。

美味しそうな卵そばに舌鼓を打ちます。

店内。ちゃんと銀閣がにゅーーーーっと出てきた白い壁もありました。

かくして、われらの狸を巡る旅は終了。
小説の舞台となった土地を巡り、キャラクターが会話した内容を友人と語り合い、
アニメのシーンを再現し、
阿呆の血がしからしむるまで遊びつくしたことがこの上なく楽しいとは。

全国の森美氏ファンであれば是非訪れてみて欲しい。
聖地巡礼、これにて閉幕です!